バイクの性能を最大限に引き出すためには、バイク専用オイルが欠かせません。カー用品店に並ぶ、手軽で安価な車用オイルが代用できそうに思えますが、バイクには車と異なる性能が求められます。
この記事では、バイク専用オイルがなぜ優れているのか解説しています。バイクの特性を知り、適切なオイル選びの参考にしてください。
目次
バイク専用オイルとは?車用オイルとの違いは?

バイク専用オイルは、多くのバイク特有の構造に最適化されていて、一般的な車用オイルとは異なります。なぜ、バイクには専用オイルがあるのか、以下より2つ紹介します。
エンジン・ミッション・クラッチの構造が違う
バイクは、車に比べて車体がコンパクトです。エンジンやミッションなどを積載するスペースに限りがあるため、エンジン・ミッション・クラッチを一体化している場合が多いといえます。それに合わせて、エンジンオイルとクラッチ、ミッションオイルを兼用するのが一般的です。
つまり、バイク専用オイルは、エンジンの潤滑性、ミッションの極圧性、さらにクラッチの摩擦特性を同時に満たさなければなりません。一方、車はエンジンやミッション、クラッチが独立して配置されているため、オイルは個々の性能を引き出すことに特化しています。
バイクは高回転型のエンジン特性
多くのスポーツバイクや一般的なバイクは、車と比べて、高回転域で使用される時間が長いという特徴があります。
バイクは車と比べて重量が軽いため、大きなトルクを必要としません。その代わり、コンパクトなエンジンでも高出力を得なければならないため、エンジンが高回転型となっています。その結果、高速でエンジン内を循環するエンジンオイルは、激しくかき混ぜられ油膜の保持が難しくなります。バイク専用オイルには、油膜切れを防ぐ高い性能が不可欠です。
バイク専用オイルが優れている理由

バイクに、バイク専用オイルを使用するには、それなりの理由があります。バイク専用オイルが優れている理由を、以下より3つ紹介します。
高回転エンジンに最適化されている
バイクは、コンパクトなエンジンで大きなパワーを生み出さなければなりません。例えば、一般道を走行する車は2〜4千回転くらいで走行するのに対し、バイクは4〜9千回転以上で運転される場面も珍しくありません。
そのため、バイク専用オイルで最も避けなければならないのは、高回転時の油膜切れです。高回転でも適切な粘度を維持し、かつ目まぐるしく変わる温度変化に対応できる性能が求められます。さらに、低温時の流動性や、高温時の粘度維持性を保つ専用設計がされています。
クラッチの滑りを抑える働きがある
多くのバイクは、クラッチがエンジンオイルに浸かった状態で動力を伝達する「湿式多板クラッチ」です。そのため、エンジンの回転をスムーズにする潤滑性だけを重視すると、クラッチが滑りやすくなるリスクがあります。
バイク専用オイルは、潤滑性もさることながら、クラッチが確実につながる適度な摩擦力が求められます。
ミッションの保護に優れている
多くのバイクは、車と大きく違うミッション構造の「常時噛みあい式」が採用され、複数のギアが常に接触しながら高速回転してます。さらに、加速時や登坂時など大きな負荷がかかる際、ギア同士には強い圧力が発生します。
そのため、バイク専用オイルは極圧性能に優れた添加剤を配合し、金属の摩耗や焼き付きを防がなければなりません。
バイク専用オイルの選び方

バイク専用オイルは、バイクに特化した性能を有するため、最適なオイルを選ばなければなりません。以下より、バイク専用オイルの選び方を、タイプ別に紹介するので参考にしてください。
粘度で選ぶ
バイク専用オイルの選び方で最も大事なのは粘度です。粘度は、「5W-30」や「10W-30」などと表記され、下表に示した意味があります。
5W | 30 |
低温時の粘度 数値が小さいほど寒さに強い | 高温時の粘度 数値が大きいほど熱さに強い |
バイクごとに、メーカー推奨の粘度があるため、取扱説明書を確認しましょう。
グレードで選ぶ
グレードはオイルの性能や品質を保証する規格であり、グレード表記の多くが下表のAPI規格とJASO規格です。
API規格 | JASO規格 | |
表記 | SJ、SL、SM、SN、SN PLUS、SP | MA、MA1、MA2、MB |
バイク用のAPI規格は現在、SNが最も高性能で環境性能が高いオイルです。JASO規格は、バイクの特性ごとに適したグレードを選びましょう。
使用用途に合わせて選ぶ
粘度とグレード以外では、普段の使い方に合わせてベースオイルを選ぶとよいでしょう。エンジンオイルの7〜9割を占めるベースオイルは、オイルの性能に大きく影響します。
各ベースオイルの特徴と、適した利用シーンは下表のとおりです。
特徴 | 適した利用シーン | |
鉱物油 | 原油を蒸留して精製 リーズナブルで広く普及しているオイル | 通学や通勤 |
部分合成油 | 鉱物油と化学合成油を配合 性能とコストのバランスに優れる | 街乗りからツーリングまで |
化学合成油 | 科学的に合成した高性能オイル 潤滑性や耐熱性に優れるが高価 | 高速走行やサーキット走行 |
判断に迷ったら、プロに相談するとよいでしょう。
まとめ|バイクの最高のパフォーマンスは専用オイルから

バイク専用オイルは、バイク特有の過酷な環境からエンジンや各部品を守る役割を担っています。バイクはエンジンとミッション、クラッチが一体となっているため、高温に耐えつつミッションを保護し、クラッチの滑りを防ぐ性能が求められます。
愛車のポテンシャルを最大限に引き出し、安全で快適なライディングを楽しむため、バイクには専用オイルを使いましょう。