2ストエンジンは、高出力と軽量さが魅力の内燃機関です。しかし、排出ガスや燃費の課題から、近年は4ストエンジンや電動化への移行が進んでいます。
この記事では、2ストエンジンの基本的な仕組みや特徴、環境規制の歴史について解説します。この記事を読めば、サステナビリティ実現に向けた最新の技術や今後の展望について詳しくなれます。ぜひ最後までご覧ください。
目次
2ストエンジンとは?

「シンプルな構造で高出力が出る従来型のエンジン」かつ「排出ガスや燃料効率など課題がある」のが2ストエンジンです。ここでは、2ストエンジンについて解説します。
シンプルな構造で高出力が出る従来型のエンジン
2ストエンジンは部品点数が少なく、構造が非常にシンプルな従来型のエンジンです。19世紀後半に多くの発明者の手を通じて誕生しました。
ピストンが下降する際に混合気を吸入し、上昇時に圧縮・点火・爆発・排気を連続的に行う仕組みです。クランクシャフト1回転ごとに燃焼が発生するため、同じ排気量なら4ストエンジンよりも高出力が得られるという大きな特徴があります。
軽量でコンパクトなため、バイクや小型機械で広く利用されてきました。
排出ガスや燃料効率など課題がある
2ストエンジンは、燃焼室への混合気の送り込みと排気を同時に行うため、未燃焼の燃料やオイルが排気ガスに混じりやすい欠点があります。その結果、4ストエンジンに比べて排出ガス性能や燃費が劣るという課題があります。
そのため、度重なる環境規制の強化に対応が追い付いていません。2025年7月現在、国内の自動車やバイク用としてはほとんど姿を消しましたが、小型機械など一部で利用が続いています。
サステナビリティ実現に向けた環境規制

サステナビリティの実現に向け、世界でさまざまな対策が取られています。そのなかの1つが環境規制です。ここでは、世界の環境規制の流れを解説します。
1970年:アメリカのマスキー法
自動車の排気ガスによる大気汚染を減らすための厳しい法律「マスキー法」が1970年にアメリカで制定されました。この法律は、1975年以降の車は一酸化炭素(CO)や炭化水素(HC)、1976年以降の車は窒素酸化物(NOx)を、それまでの車の1/10以下に減らすことが義務づけられます。
この法律によって自動車メーカーは、排気ガスをきれいにする新しい技術の開発を迫られました。
1998年:日本で二輪車の排気ガス規制が本格化
世界での環境規制を受け、日本では1998年に初めてバイクに対する本格的な排気ガス規制が始まりました。マスキー法と同様に、一酸化炭素(CO)や炭化水素(HC)、窒素酸化物(NOx)などの有害な排気ガスの排出量が厳しく制限されます。
この規制を受け、2ストエンジンは基準をクリアできず、多くの人気バイクが生産終了となりました。
2006年:さらに厳しい規制値の導入
2006年、日本ではバイクの排気ガス規制がさらに厳しくなりました。1998年の規制値よりも7~8割も排出ガスを減らすことが求められ、一酸化炭素や炭化水素、窒素酸化物の基準が大幅に引き下げられます。
測定方法もエンジンが冷えた状態で行う「冷機モード」に変更され、これにより多くの2ストエンジンやキャブレター車、空冷エンジン車が生産終了となりました。
2016年以降:国際基準(EURO4/5)への適合要求
EUは、二輪車向けのEURO4を2016年に、新型車に対するEURO5を2020年に排気ガス規制の国際基準として発表します。そして、日本を含む各国でも適合要求がされました。
そして日本は、EURO4とほぼ同じ内容の「平成28年排出ガス規制」とEURO5とほぼ同じ内容の「令和2年排出ガス規制」が導入します。
2ストエンジンの課題を解決する未来とは?

2ストエンジンには課題があるため、規制が強化されてきました。2ストエンジンは今後、どのような未来を迎えるのでしょうか。ここでは、2ストエンジンの課題を解決するための方法を紹介します。
4ストやEVへの置き換え
2ストエンジンの排出ガスや燃費の課題に対し、最も進んでいるのが4ストエンジンや電動モーターへの置き換えです。4ストエンジンは燃焼効率や排気ガスを抑える性能に優れ、電動化はゼロエミッションを実現します。
そのため、多くのバイクや自動車、小型機械で2ストからの置き換えが進み、環境負荷の低減が図られてきました。しかし、2025年現在は小型機械、競技用バイク、大型船舶など用途を限定しながらも、現役で利用されています。
次世代の2ストエンジンによる排出ガスの大幅低減技術
最新の2ストエンジン技術では、電子制御燃料噴射や高性能触媒、新しい掃気方式などにより、未燃焼ガスの排出を大幅に削減し、燃費も向上しています。バイオ燃料や合成燃料への対応、カーボンニュートラル燃料の研究も進行中です。
例えば、多種多様なバイクを手掛けるカワサキは大阪万博にて2スト水素ターボを公開し注目を集めました。これらの技術革新により、用途や地域によっては2ストエンジンの持続的な利用が期待されています。
2ストエンジンの未来はまだまだ明るい!

この記事では、2ストエンジンの基本的な仕組みや特徴、環境規制の歴史について解説しました。2ストエンジンは環境規制の強化により大きな転機を迎えましたが、技術革新によって排出ガスや燃費の課題を克服しつつあります。
今後は4ストやEVとの共存や、次世代2スト技術の進化により、サステナビリティを実現しながら多様な分野で活躍し続ける可能性があります。