情勢コラム

ナフサとは?原油との関係や使われている製品について徹底解説

原油とナフサはどちらも石油製品です。しかし、原油からナフサがどうやってできるのかまでは分からない方も多いでしょう。

この記事では、石油から精製される製品やナフサを使用している製品・原油とナフサの価格関係について解説しています。原油とナフサの関係を知ることで石油の理解が深まり、ニュースや政治的事情との関係性や価格変動まで読み取れるようになります。

ナフサとは?ガソリンとの違い

ナフサとは、原油を沸点の差や圧力を利用して、蒸留・分離して得られる石油製品の一つです。

では石油と原油の違いやナフサの違いは何かを表でまとめました。

  石油 原油 ナフサ
名前 総称 採取したままの石油 原油を蒸留した成分
性質 製品によって異なる 黒い 透明
粘度 製品によって異なる ドロドロ サラサラ

石油はLPガスやナフサなどを含めた総称で、原油は地中から採取したままの状態を言います。

ナフサは別名を粗製ガソリンと呼ばれ、何段階もの工程を経て初めてガソリンになります。オクタン価(異常燃焼の起こしにくさ)が低いナフサがガソリンとして使用されていた時期もありましたが、車の不具合が多く使い物にならなかったため、精製して現在のハイオクとレギュラーになりました。

また、ナフサの由来は、アフロ・アジア語族に属するアッカド語のnaptuが語源と言われています。ペルシア語のnaft(湿っていること)に由来する説もあり、オイルやガソリンの語源である英語とは違い、非常に古い語源であるのは馴染みにくい理由の一つかもしれません。

石油からできるさまざまな製品

原油から精製される成分はLPガス・ナフサ・灯油・軽油・残油の5種類です。

原油を360度に加熱し蒸発させ、高さ数十メートルもある常圧蒸留装置の下から吹き込みます。気化した原油は蒸留装置内を上昇し、沸点の低い成分から順に冷める原理を利用し、回収しています。

『残油(重油)』は最も沸点が高く、350℃以上で蒸発する成分で、残留炭素が多いため粘度が高くドロドロしています。主にアスファルトや潤滑油の材料です。

次に沸点が高い成分が『軽油』です。250〜350℃程度で蒸発する成分で、トラックやバスの燃料として使用されます。常圧蒸留装置から得た軽質軽油を水素化精製装置で再処理しすると軽油の完成です。

3番目に沸点が高い成分が『灯油』です。170℃〜250℃程度で蒸発する成分で、ストーブやジェット燃料として使用されます。常圧蒸留装置から得た粗灯油を水素化精製装置で処理すると、灯油として世に出回ります。

そして4番目に沸点が高い成分が『ナフサ』です。30〜80℃程度で蒸留するものを軽質ナフサ、80℃〜200 ℃程で蒸留するものを重質ナフサと言い、蒸留されたナフサは接触改良されたのちにガソリンとして製品化されます。

最後に30℃以下の沸点である『LPガス』です。プロパンが主成分で、圧縮すると容易に液化します。コンロやガスボンベの燃料として馴染みのある成分です。

原油からできるナフサの量

常圧蒸留装置から得られるナフサの量は決まっており、重質原油からは16%、軽質原油からは25%、超軽質原油からは53%のナフサが得られます。

しかし、これは石油を一時装置(常圧蒸留装置)で精製した時の量であって、石油製品の生産比率は流動接触分解装置などの二次装置により十分調整が可能です。実際は需要に合わせて割合が変更されています。

ナフサが使われている製品は何があるの?

ナフサが使われている製品はガソリンだけではなく、毛布や文具など身近なものがたくさんあります。

石油化学誘導品 材料 商品
プラスチック樹脂

・ポリエチレン
・ポリプロピレン
・塩化ビニル など

・電気製品
・フィルム
・文具 など

合成繊維原料

・エチレングリコール
・テレフタル酸
・アクリロニトリル など

・シャツ
・セーター
・テント
・毛布 など

合成ゴム

・ブタジエンゴム
・クロロプレンゴム など

・自動車タイヤ
・ベルト
・靴  など

塗料原料など

・ポリウレタン
・酢酸エチル
・ブタノール など

・インク
・ペンキ  など

合成洗剤原料など

・アルキルベンゼン
・高級アルコール
・エチレンオキサイド など

・洗顔
・シャンプー
・化粧品  など

まず、蒸留されたナフサはナフサ分解工場に運ばれ、化学反応によってエチレン・プロピレン・ブタジエン・ベンゼン・トルエン・キシレンに分けられます。

分けられた成分はその後、石油化学誘導品工場に運ばれプラスチックや塗料原料へと変化を遂げ、最終的に商品として市場に出回ります。

原油とナフサの価格関係はいかに?

前述でも触れているように、ナフサは原油から精製されているため原油の価格が上昇すれば当然ナフサの価格も上昇します。つまり、原油を原料としているプラスチック樹脂でも同じことがいえるでしょう。

産油国の政治的な事情や、タンカーの事故・世界経済の状況によって原油価格は毎日変動しています。そのたびにナフサ価格の交渉をするわけではなく、「ナフサリンク」と呼ばれる価格改定の手法で決定されています。

ナフサリンクの場合、買い手と売り手が最初に決めたルールで価格を改訂しており、価格改定のタイミングは基本年4回です。

原油の価格が変動した際には、プラスチック製品などの材料も定期的に変動していると思ってください。

まとめ|ナフサは化学製品の基礎

ナフサは原油から精製され、私たちの生活必需品にも多く使用されています。原油価格が上がるとナフサの価格も一緒に上がってしまうため、プラスチックや合成ゴムなどの製品は原油に連動していると覚えておくとよいでしょう。

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