潤滑油

ダンプの作動油は何種類ある?劣化を防ぐ最適な交換頻度も解説

ダンプなどの重い荷物を動かす車には作動油が使われており、現場で働く方なら一度は目にしたことがあるでしょう。

作動油は時間経過で劣化が進むため、定期的な交換が必要です。交換する際に気になるのが、作動油の種類ではないでしょうか。

この記事では、ダンプに使われる作動油の種類や交換頻度についてご紹介します。

そもそも作動油にはどのような役割があるのか

作動油は、油圧装置で重いものを動かす際に、動力を伝達する媒体としての役割を果たします。電気や水を使った制御装置よりも大きなパワーを出力でき、油圧の大きさを調整して機械の動きを制御しているのです。

そのため、作動油がないと油圧装置を使った機械を動かせません。作動油はダンプやクレーン以外にも、以下の車で利用されます。

  • ミキサー車
  • 散水車
  • 高所作業車

工事現場などで使われる重機のほとんどが、油圧式で稼働していると考えてもよいといわれています。

さまざまな場所で活躍する作動油ですが、得られる作用は動力伝達だけではありません。主な作用を以下の3項目でご紹介します。

  • 潤滑
  • 防錆
  • 冷却

潤滑

作動油には添加剤と呼ばれる成分が含まれます。添加剤が装置に付着すると、表面に油膜が発生します。油膜は金属同士が擦れあった際の摩耗を防ぐ効果があるため、機械の損傷を最小限に抑える作用があるのです。

また、金属同士の摩擦を抑えることによって、動力伝達効率の向上にも貢献します。

防錆

多くの金属は、雨風に晒され続けると徐々に酸化していきます。油圧装置も例外ではありません。

しかし油圧装置は、作動油が形成する油膜によって空気中の酸素や水分から守られます。油膜には強い吸着力があり、金属部分を持続的に保護します。

その結果、油圧装置を長期間使用しても錆びにくく、装置の故障を防止できるのです。

冷却

機械制御をするうえで考慮しなければならない要素の1つが「冷却」です。油圧装置から発生する熱を効率よく放出できないと、装置内の温度が上昇し続けます。

最悪の場合、焼き付きが発生し機能停止してしまう可能性があるでしょう。

作動油は、金属摩擦を抑える効果があるため発熱を防ぎます。また、流動性が良く、発生した熱を運び去るはたらきもします。そのため、装置内の温度が上昇し続けるのを防げるのです。

作動油には5種類ある

作動油は、油圧装置を正常に動作させるために欠かせない物ですが、使用する環境によって求められる性能が異なります。どのような種類があるのか把握しておくと、作動油選びの際にスムーズに決められるでしょう。

5種類の作動油がもつ特徴について以下でご紹介します。

  • 石油系オイル(鉱物系)
  • 合成系オイル
  • 水溶性オイル(含水系)
  • 生分解性オイル
  • 高含水オイル

石油系オイル(鉱物系)

主成分は石油です。別名「R&Oオイル」とも呼ばれます。国内の油圧装置では最も多く使用されており、一般作動油・耐摩耗性作動油・高粘度指数作動油などの種類があります。

酸化防止剤・防錆剤などが含まれており、装置内部の劣化防止効果が高い作動油です。

合成系オイル

エステルとポリグリコールと呼ばれる油を合成した作動油です。リン酸エステル系作動油・脂肪酸エステル系作動油などの種類があります。

合成系オイルは以下4つの性質に優れています。

  • 安定性
  • 摩耗防止性
  • 難燃性
  • 潤滑性

しかし、ゴム・塗料に対する耐食性や、金属に対する耐腐食性に劣ります。種類によっては水の混入に注意が必要です。

水溶性オイル(含水系)

主成分に水が含まれる作動油です。重機使用時の火災を防ぐために開発された背景があります。

O/Wエマルション・W/Oエマルション・ポリグリコール溶液などの種類があります。難燃性に優れ、ほかの作動油よりも低価格で入手可能です。

生分解性オイル

植物油と合成系基油を主成分とした作動油です。近年、地球環境保護活動が盛んに行われており、産業廃棄物として扱われる廃油の処理が問題視されています。

生分解性オイルは、地中の微生物が分解可能な成分を利用しているため、事故などで土壌に油が流出しても土壌汚染を避けられます。そのため、環境にやさしい作動油として注目を集めつつあるのです。

高含水オイル

難燃性作動油の一種で、成分の90~95%が水です。残りの5~10%に鉱油や添加物を配合しているため、難燃性に優れます。

HWCF(High Water Contents Fluid)または、HWBF(High Water Base Fluid)とも呼ばれます。熱伝導率が良く、低価格で入手可能な作動油です。

作動油の選び方

作動油を誤って使用すると、油圧装置の破損や事故を発生させるリスクがあります。

例えば、可燃性の高い作動油を使用できない現場で誤って使用すると、火災発生のリスクが上がってしまうでしょう。そのため、種類選びは慎重に行う必要があります。

作動油選びの指標として最初に考えるべき要素は、石油系オイルと難燃性オイルのどちらを選ぶかです。

石油系オイルの中から選ぶ際は、油圧の大きさや使用温度を指標に選ぶとよいでしょう。難燃性オイルは、使用する温度で最適な作動油が異なります。油圧装置の取扱説明書を確認しながら、最適な作動油を選びましょう。

作動油を点検・交換しないリスク

作動油は時間経過とともに劣化していくため、定期的な点検や交換が必要です。メンテナンスを怠ると、油圧装置や精密機器への傷・カジリ・焼き付きが発生し、故障や事故につながる可能性があるでしょう。

機械が故障すると作業を中断する必要があります。また、修理費用が高額になるケースも十分にあるでしょう。

総合的に見ると、メンテナンスを適切に実施するほうが費用節約につながるため、忘れず行う必要があるのです。

作動油の理想的な交換頻度

作動油の理想的な交換頻度は1年に1回といわれています。しかし、油圧装置や作動油が新品の場合は、装置内部の金属摩擦により金属カスが発生します。

そのため、初回使用時は3か月で交換するとよいでしょう。作動油の劣化は避けられないため、機械の使用頻度が少ない場合でもしっかり行いましょう。

自身で作動油を交換する際の注意点

ダンプを含む特別車両の作動油を交換するのに免許や資格は必要ありません。しかし、種類だけではなく、油圧装置に対応した適切な量で交換しないと、機械の破損につながるでしょう。

また、作動油は温度によって粘性が変化します。気温変化で異常発生する可能性があるため、交換の際は十分に注意しましょう。

作動油を保管・処理する方法

作動油保管の注意点は食品と似ています。直射日光や多湿な環境を避ければ、未開封で10年以上保管可能です。作動油が入ったドラム缶は、横に倒した状態で蓋部分を油面より下にしておくと、空気や水分の混入を防げます。

使用済みの作動油をそのまま廃棄すると、土壌や水質汚染を引き起こします。購入店舗で引き取ってもらうか、廃油処理箱に入れるようにしましょう。

まとめ|作動油は定期的に交換しましょう!

作動油には主に5つの種類があります。ダンプの作動油は免許なしで交換できますが、種類や量を誤ると故障や事故につながるリスクがあります。油圧装置を良い状態で稼働させるために、適切な作動油で定期的に交換しましょう。

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