潤滑油

水溶性切削油とは?油性との違いや選び方について解説

機械加工をしている方であれば「切削油剤を補充したいけど、どれにすればよいか分からない」と思うことがあるかもしれません。

切削油剤には水溶性や油性などの種類があり、それぞれ特徴が異なるため、適切なものを選ぶ必要があります。この記事では、水溶性切削油の特徴や選定方法を解説します。

切削油剤の働き

「油」と聞くと多くの方は物体同士の滑りをよくする「潤滑」を思い浮かべるかもしれません。しかし、切削油剤は潤滑以外にもさまざまな働きをするのです。これから以下5つの働きについて解説していきます。

  • 潤滑作用
  • 抗溶着作用
  • 冷却作用
  • 錆止め作用
  • 洗浄作用

潤滑作用

機械で金属加工をすると、金属部材と工具が強い力で擦れあいます。油剤は金属同士の摩擦を低減し工具の寿命を伸ばす効果があるのです。

抗溶着作用

油剤を使わずに加工をすると、構成刃先が発生しやすくなってしまいます。

構成刃先とは、切削によって金属間に発生した高い圧力や摩擦熱によって、工具の刃先に部材の削りカスがくっつき、刃先の一部になる現象です。

構成刃先は、くっついたり落ちたりを繰り返すため、工具の先端が変形し加工精度が落ちます。しかし、油剤が金属間に入り込むと構成刃先の発生を抑制できるため、精度の良い加工を実現できるのです。

冷却作用

多くの金属は熱すると膨張する性質を持っています。加工は1mmの誤差も許されないケースが多いため、加工で発生する熱を上手に外に逃がす必要があるのです。油剤は、発生した熱を素早く吸収するため、工具や部材に熱を溜めずに加工を続けることができます。

錆止め作用

金属は空気や水分に接触すると酸化が進み、表面に錆が発生していきます。工具の先端に錆が発生してしまうと、加工面が荒くなり、加工精度が低下します。そのため、可能な限り金属部分を空気に触れさせないようにする必要があるのです。

油剤は工具を油膜によって空気から隔離するため、錆止め効果もあるのです。

洗浄作用

加工していると、削り取られた材料の破片が周囲に飛び散ります。工具と部材の間に入り込むと構成刃先になるケースがあるでしょう。また、機械のまわりに飛び散ると作業環境が汚くなってしまいます。

油剤は、金属の破片が飛び散るのを防ぐため、加工精度向上は清潔な作業環境実現に貢献しているのです。

水溶性切削油剤と不水溶性切削油剤の違い

切削油剤には、大きく分けて「水溶性切削油剤」と「不水溶性切削油剤」の2種類があります。それぞれの油剤には特性や使用方法が異なりますが、優劣はなく必要に応じて使い分ける必要があるのです。水溶性切削油剤の特徴は以下のとおりです。

  • 水に溶かして使用
  • 冷却性に優れる
  • 発火の心配がない

一方、不水溶性切削油剤の特徴は以下のとおりです。

  • 水に溶かさずに使用
  • 火災の危険性がある
  • 潤滑性能に優れる

水溶性切削油剤の種類

水溶性切削油剤は、使用されている成分の違いから以下3つに大別できます。

  • A1種(エマルション)
  • A2種(ソリュブル)
  • A3種(ソリューション)

これから、それぞれの特徴について解説します。

A1種(エマルション)

A1種とは、鉱油と呼ばれる水に溶けない成分と界面活性剤を合わせて作られた油剤です。

水に溶かすと乳白色に変化するため、A1種を使った場合は一目でわかるでしょう。

A1種は、水溶性切削油剤の中では最も潤滑性能に優れており、切削抵抗の大きな加工にも使えます。

A2種(ソリュブル)

A2種は、界面活性剤のみ、または水に溶ける成分と溶けない成分を混ぜた混合液から作られています。水で薄めると見た目が、半透明から透明に変わります。潤滑・洗浄・冷却の性能が良いため、さまざまな加工で使われているのです。

A3種(ソリューション)

A3種は、水に溶ける成分のみから作られた油剤です。水で薄めると見た目が透明に変化しますが、一般的には緑に着色されている場合が多いでしょう。

加工時の泡発生を防止できる特徴があり、研削加工で使用されるケースが多いといわれてます。

水溶性切削油剤の選び方

油剤を選ぶ際は、加工材料の種類・加工方法などを基準にするとよいでしょう。また最近は、環境保護の視点から油剤を選ぶ方もいます。

加工材料から選定

加工する部材によって、油剤に求められる特性に違いがあります。例えば、鋼を加工する際は高い潤滑性能が要求されます。そのため、潤滑性能の良いA1種(エマルジョン)が適しているといえるでしょう。

加工方法から選定

加工方法から油剤を選ぶ場合も多いでしょう。研削加工などの多くの摩擦熱が発生する加工では、潤滑性能だけでなく高い冷却性能も必要です。研削加工をする場合はA2種(ソリュブル)が適していると言われています。

環境保護から選定

油剤は、使用後に廃油として焼却処分されます。かつては、焼却の際にダイオキシンが発生する油剤が使用されていましたが、PRTR法の制定により、有害物質を含まない油剤の使用が求められるようになったのです。

このように、環境保護を基準に選ぶケースもあるため、覚えておくようにしましょう。

使用時の注意点

油剤を使用しながら加工していると、皮膚や目・鼻などに飛び散る場合があるでしょう。油剤は人体に影響があるため、可能な限り触れないようにする必要があります。

作業服・手袋・保護メガネ・マスクの着用を忘れずに行いましょう。

まとめ|材料や加工方法にあった水溶性切削油剤を選ぼう

水溶性切削油の中にも、さまざまなタイプのものがあります。選定の際は、材料や加工方法などを基準にするとよいかもしれません。

油剤の飛沫がトラブル発生につながる可能性もあるため、作業服・手袋・保護メガネ・マスクの着用などの注意点を守って作業を行いましょう。

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