ATFの管理が、車の寿命を左右するのをご存知でしょうか。エンジンオイルは定期的に交換しても、ATFはノーチェックの方も少なくありません。しかし、ATFを交換しないと、変速ショックや燃費の悪化などの不具合につながり、最悪の場合、故障の恐れがあります。
この記事では、ATFがなぜ車の寿命に大きく影響するのか、そして見逃せない役割や注意点についても解説しています。愛車を長く快適に乗り続けるため、ぜひ参考にしてください。
目次
ATFとは?CVTFやミッションオイルと何が違う?

ATFとは、AT車専用のトランスミッションオイルです。MT車用のトランスミッションオイルとは違い、油圧システムを通じて、AT内の各部品を制御する働きがあります。エンジンオイルや冷却水などと区別するため、多くの場合、赤色に着色されています。
また、CVT車には専用のCVTF(CVTフルード)を使用しましょう。AT車とはトランスミッションの構造が違うため、ATFに入れ替えると故障を招く恐れがあります。
ATF5つの役割

車を長持ちさせるためにATFは不可欠です。ATの主な働きは次の5つがあります。
- 動力を伝える
- 変速を制御する
- ATを摩耗から保護する
- ATの温度を下げる
- ATを洗浄する
ATFの役割を掘り下げつつ、AT車の特徴を解説します。
動力を伝える
ATFの大きな役割は、エンジンで発生した動力をミッションに伝えることです。
AT車は、エンジンとミッションの間にトルクコンバーターと呼ばれる部品を介します。エンジンが回転するとトルクコンバーター内部でATFが循環し、動力が段階的に伝わり、車をスムーズに発進・加速させます。動力伝達に欠かせないトルクコンバーターを作動させるためには、粘性のあるATFが欠かせません。
変速を制御する
AT車の変速は、ATFが油圧をコントロールして各部品を作動させて行われています。アクセルの踏み込みや車の速度に合わせて、油圧回路内の複雑な油路を切り替えるのがATFです。
油路の切り替えにより、複数のギアとクラッチが作動し滑らかに変速します。AT車のスムーズな加速は、ATFによる精密な油圧コントロールによって実現しています。
ATFは変速の要となる油圧システムを正しく動かすため、適切なオイル選びと定期的な交換が欠かせません。
ATを摩耗から保護する
ATFは、ミッション内を潤滑し、各部品を摩耗から守る役割を果たしています。
ATの内部は、各種ギアやクラッチ板類、複雑な油圧回路で構成され、多くの金属同士が絶えず接触しています。金属摩耗を抑え、円滑に動作するためには潤滑特性がとても重要です。
ATの温度を下げる
ATFは、高温になったATやAT内の金属部品を冷やす役割があります。
ATが高温になるとATFは粘度が低下するため、変速の不具合やATの故障を引き起こしかねません。そのためATFは、ATとオイルクーラー間を循環して、ATF自体の温度を下げ、AT全体を冷却しています。
ATを洗浄する
AT内部は、複数のギアやクラッチ板が擦れ合って金属粉が発生するため、洗浄が必要です。複雑で緻密なATは、小さな金属粉も、詰まりや摩耗の原因となります。
そのため、ATFはAT内を循環して汚れや金属粉を洗い流す役割も果たしています。
ATFを交換しないとどうなる?

ATFは、エンジンオイルと比べて交換頻度が少ないとはいえ、定期的な交換が必要です。ATFを交換しないと起こりうる不具合を、2つ紹介します。
変速や加速に違和感がでる
ATFが劣化すると、変速時のショックやMT車のクラッチ滑りのような症状が発生します。なぜなら、ATFは劣化が進むと粘度が低下し、変速に必要な油圧が発生しづらくなるからです。
適切な油圧にするためには、エンジンの回転を上げなければなりません。そのため、エンジンとAT間に回転差が生じ、変速時には回転差によってショックが発生します。
また、ATFの劣化により、エンジンの動力をATに伝えるトルクコンバーターも回転し始めるタイミングが遅くなります。その結果、アクセルを踏んでも車がなかなか動き出さない、滑りのような症状を感じるでしょう。
燃費が悪くなる
ATFが劣化すると、燃費の悪化につながります。
ATFの劣化により粘度が低下すると、トルクコンバーターの作動が遅れるため、発進時や加速時にアクセルを踏み込む量が増えます。さらに、走行中もトルクコンバーター内で滑りが発生するため、動力伝達の低下が避けられません。その結果、正常時と比べて燃料消費量が増えて燃費が悪化します。
ATFの交換タイミングと注意点

ATFの交換時期は、一般的には4〜10万kmが目安とされています。各自動車メーカーが推奨している交換時期があるため、愛車の取扱説明書やメンテナンスノートを参照しましょう。ただし、街乗りや登坂路の走行が多い車は、メーカー推奨時期より早めの交換が安心です。
また、無交換で10万km超えの場合、ATF交換によってATに不具合が出る恐れがあるため、カーディーラーやカー用品店で整備士に相談しましょう。
まとめ|ATFの交換が車の寿命を延ばす

ATFは、動力の伝達やスムーズな変速など、AT車には欠かせないオイルです。交換を怠って劣化が進むと、変速ショックや燃費が悪化するほか、ATの故障といった重大なトラブルにつながりかねません。不具合が出てからでは修理費用が高額になる可能性があるため、エンジンオイル同様、定期的な点検や交換などの管理が必要不可欠です。
安心して快適なドライブを楽しむためにも、定期的にATFを交換しましょう。